時間と体力があるなら、陸路の旅がおすすめです。
切符を買い、車を探し、宿を決め、言葉が通じなければ最後は身振り手振り。面倒は多いが、苦労した旅ほど後になってよく思い出す。ツアー旅行だと「行ったゾ!」で終わるところが、陸路の旅には笑いも失敗も、たっぷり付いてくる。
今回はチェンマイから国境へ向かい、むき出しのエンジンを積んだ高速ボートでメコン川を下って、ラオスの世界遺産ルアンパバーンを目指したときの話です。さて、ロマンは生まれたか? もちろんハプニングは起きたのか?😁
チェンマイは、もう飽いた!
ごめんなさい、チェンマイ愛好者の皆さん。おいらはすでに二、三度来ていた。ロイクラトーンの祭りも終わり、夜市の土産物屋を何周もして、さすがに次へ行きたくなったのである。



木彫りの黒いお面を見つけた。「日本へ持ち帰って売れば儲かるかも」と、よせばいいのに数個購入。トランクはかさ張ったが、後日ネットオークションで完売した。旅先でも商売根性だけは休まないおいら(笑)。
翌日、旅行会社のパンフレットを眺めていると、ルアンパバーン行きの高速ボートが目に入った。値段はホテル一泊分ほど。
「安い。決めた!」
詳しい内容は、ほとんど聞かなかった。行き当たりばったりの旅では、細かく考えると出発できなくなるのだ😁
ワゴン車でタイ国境へ
翌朝、ホテルをチェックアウトするとワゴン車が迎えに来た。車内はバックパッカー風の外国人ばかり。途中でイスラエル人のカップルと雑談しながら、車は北タイの田舎道を延々と走る。
夕方近く、ようやくチェンコーンの国境へ到着。待合所には各社の旅行客が二、三十人ほど集まっていた。そこで日本人の青年や女性旅行者とも知り合った。安い宿は、トイレとシャワーこそあるものの、なかなかのみすぼらしさ。ツアー料金を考えれば仕方ない、と諦めて一泊した。
爆音、激揺れ、水しぶき!
翌朝、メコン川を渡ってラオスへ入国。川岸には細長い高速ボートが並んでいた。座席は狭く、足を伸ばす余裕もない。そしてエンジンが始動した瞬間――。
ドドドドドドッ!
むき出しの大きなエンジンが、耳元で吠える。爆音、上下左右の揺れ、容赦ない水しぶき。耳栓を売っていた理由が、出発してからよく分かった(泣)。
三時間ほど爆走して休憩所へ着いたころには、身体がカチカチ。食事をして再び出発したが、今度はエンジンの音がおかしい。まさかの不調である。整備の末どうにか動き出し、ルアンパバーン近くの船着き場へ到着した。
シンドカッタなあ~。「高速ボート」という名前から爽快な船旅を想像したおいらが甘かった。
ルアンパバーンで始まった妙な同宿
船着き場から旧市街へ向かうと、道中で知り合った日本人女性が後ろから付いてきた。風邪気味なのに安宿を探しているらしい。おいらは余計な親切心を出し、「一人でも二人でも部屋代は同じだから、同じホテルでもいいよ」と提案してしまった。
ところが空いていたのはダブルの部屋だけ。二人で一瞬、妙な沈黙。しなければいい思案をしたところから、旅は予想外の方向へ進み始める。
細かなことは大人の旅行記ということで省略します(笑)。長旅の疲れと、見知らぬ土地の夜。二人の距離が急に近くなり、翌朝からは何事もなかったような顔で、一緒に街を歩くことになった。
二人で歩いた世界遺産の町
メコン川沿いを歩き、屋外カフェでコーヒーを飲み、金色の寺院を訪ねた。川面は道よりずっと低く、対岸には家がぽつぽつ見える。静かで、時間の流れがゆるやかな町だった。
カフェでは、以前日本で英語教師をしていたという外国人に話しかけられた。ラオス人女性とゲストハウスを始めるのだという。ところが突然、「君はいくら貯金がある?」と聞かれた。
おいらは警戒して「三万円くらい」と、とぼけた。すると相手は、すっかり興味をなくした様子。もし「一緒に貯金をはたいて宿をやらないか」などと誘われたらどうしようと思ったが、三万円では共同経営者にもなれないらしい😁
そして、おいらは密かに逃げた
四、五日ほど一緒に過ごすと、楽しい反面、一人旅の気楽さが恋しくなってきた。おいらの旅は、そもそも一人旅ではなかったか。
そこで彼女に内緒で旅行代理店へ行き、タイのサムイ島行き航空券を一枚だけ購入。翌日、彼女が外出している間にチェックアウトし、翌日分の宿代を残して空港へ向かった。
小型機の中で少し申し訳ない気持ちになった。しかし、おいらのためにも彼女のためにも、これでよかったのだ――と自分に言い聞かせる。
旅の結論。
高速ボートより速かったのは、最後のおいらの逃げ足だったかもしれない😁
こうして旅は、サムイ島編へ続きます。
※本稿は昔の旅行記をもとに、原文の語り口を残して再構成しました。記憶が曖昧な部分や当時確認できなかった話は、断定を避けています。
